血糖値のコントロールが安定し、大きな合併症がなければ、インスリン注射を続けながら海外旅行に行くこともできます。しかし、楽しい旅行を成功させるためには、糖尿病と自分の治療内容について良く理解することと、十分な旅行準備が必要です。
まず旅行を計画する前に、あなたの体調が旅行に行ける状態か、必ずかかりつけの医師や看護師に相談しましょう。
飛行機に乗る場合:
飛行機マークのあるものは必ず機内に持ち込みましょう。
旅先で、マラソンや登山などの激しいスポーツをする場合、補食の方法や血糖管理の方法など、あらかじめかかりつけの医師や看護師に相談しておきましょう。
楽しい旅行を続けるために、低血糖の症状や対処方法を確認しておきましょう。
糖尿病があると、小さな足の傷も潰瘍などの足病変になりやすいので、フットケアを念入りに行いましょう。
深爪や傷をつくらないように注意し、清潔を保ちましょう。
色の薄い靴下は出血があったときにすぐにわかります。
傷をみつけたら、洗浄してから消毒し、絆創膏などで保護しましょう。
ばんそうこうは毎日交換しましょう。
もし大きな傷や、深い傷がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
履き慣れている靴を履く
・つま先とかかとが覆われている
・つま先に丸みがあり、余裕がある
・靴底が厚い
・着脱しやすいマジックテープ、ファスナーがついている
体調が悪く、発熱、下痢、嘔吐などで食事が摂れなくなってしまった状態をいいます。
内服薬やインスリン注射の注意点について、あらかじめ相談しておきましょう。
炭水化物や水分を補給できるように備えておきましょう。レトルトのおかゆなどを持参すると、滞在先で簡単に食べられます。
荷物の盗難や紛失は起こらないに越したことはありませんが、万が一の時に備えておくことは大切です。
医薬品や処方薬リスト等紛失した場合、滞在先近くの医療機関で処方してもらうために、上記の必要事項を覚えておきましょう。
できれば手荷物、スーツケース、同行者等に分けて携帯しましょう。処方箋コピーやインスリン、内服薬のリストは複数コピーをしておきましょう。
海外の医療機関にかかった場合、小さな処置でも医療費が高額になることがあります。旅行中に体調が悪くなったときのために、保険に加入しておくと安心です。
通常の海外旅行保険は、糖尿病などの持病の予測できない悪化に伴う治療費は、補償対象外となります。
海外旅行傷害保険に加入する際は、持病の悪化に伴う治療費も補償の対象となる特約(疾病に関する応急治療・救援費用担保特約)が付帯されているものを選ぶとよいでしょう。
航空会社や渡航先によっては、機内持ち込み手荷物のチェックが厳しくなっているところがあります。
インスリンや医療品を機内に持ち込むため、手荷物検査場で提示を求められることがあります。
外国人の職員が、糖尿病カードや処方薬リストと照合できるようにしておくと、
自分ですべて説明しなくて済みます。
飛行中の機内は、非常に乾燥しているため脱水になりやすい環境です。身体が脱水になると、血栓症(血管の中で血のかたまりができて血管が詰まってしまう)が起こりやすくなると言われています。脱水を予防するために、お水やお茶をこまめに摂りましょう。
飛行中の機内は気圧が低いため、地上よりもアルコールに酔いやすくなります。また、利尿作用もあるため脱水になりやすいので避けたほうが良いでしょう。
深部静脈血栓症(ロングフライト症候群)と呼ばれる血栓症を予防するために、1~2時間毎に通路に出て、手足を動かすなど軽い運動をしましょう。
頭上の収納に入れるとシートベルト着用サインが点灯しているときや、低血糖で力が入らないときは取り出せないので、常に手の届く範囲に置いておきましょう。
日頃から、自分の食事療法における指示カロリーで、炭水化物、脂質、たんぱく質のエネルギー量(kcal)が目分量でどれくらいか、把握しておきましょう。
海外旅行では、日本での通常の食事と、食事内容も味付けも大きく異なることが予想されます。疲労や睡眠不足も加わって、旅行中は血糖値が高くなりやすいこともありますので、食べ過ぎない程度に食事を楽しみましょう。
海外の水道水は、日本の水のように、飲料水に適した水とは限りません。
感染性胃腸炎を防ぐために、生水や氷の入った飲み物は飲まないようにしましょう。
脱水を起こさないように、水分をこまめにとりましょう。医師より水分制限の指示がある場合、その指示に従いましょう。
海外で、どこの医療機関にかかればよいかわからない、荷物が紛失した、など困った状況に遭遇した場合、大使館に連絡すると情報提供支援を受けられます。