患者さん座談会

現在インスリン注射を行っている患者さん5人に、インスリン治療に関してお話をお伺いしました。
前半の今回のテーマは『インスリン治療を始めたきっかけ』です。
インスリン注射を始めるまでの経緯や、インスリン注射の生活の中で気をつけていることなど、患者さん自身の経験やその時に感じたことなどを、率直に語っていただきました。
【座談会にご参加いただいた方のご紹介】
Aさん:60代以上、男性、2型、HbA1c値:7%
Bさん:60代以上、男性、2型、HbA1c値:6.9%
Cさん:60代以上、男性、2型、HbA1c値:6%
Dさん:40代、女性、1型、HbA1c値:7%
Eさん:30代、女性、1型、HbA1c値:6%
まずは、糖尿病と診断されてからインスリン治療を始めるまでの、経緯をお聞かせ下さい。
Aさん:
最初は糖尿の気がある程度だったんですけど、だんだん血糖値が上がってきて・・・。
実際にインスリンの注射を始めたのは、3年くらい前かな。
Bさん:
7、8年前ぐらい前に健康診断で「要医療」と診断を受けて、病院に行ったら入院をすすめられました。
でも、入院はしたくなかったので、栄養指導を受けて、飲み薬での治療を始めました。
5年くらい前に循環器の担当の医師が変わった時に、相談してインスリン注射を始めることになりました。
Cさん:
私も検診がきっかけですね。
40歳の区の検診で「高めですよ」と言われたんですけど、仕事も忙しかったので5年くらいそのままの状態でいたら、会社の検診で必ず160とか出るようになってきて、「こりゃ、やばいな」と。
近所の医者に行ったら「もう完全に糖尿病になってますから」と言われました。
そこで、奥さんに協力してもらって、食事療法と薬の服用を開始。
最初は薬だけ渡されて「これでいいのかな」と思ったんですけど、担当の医師も3年に1回は代わるという状態だったのであえて質問もせず、10年ぐらい服用していました。
ただ、どうしてもお酒はやめられず、つきあいや晩酌で毎日飲んでいますし、食事も多めにとりすぎてしまうことがあり、数値が200を超えることも・・・。そういった状態を先生に話したところ「インスリンを打ちましょう」と言われ、“本当の糖尿病になっちゃった”みたいな気がしましたね。
でも、「数値が高く薬でも下がらないなら、インスリンで下げるしかないんだ」と自分を納得させて、先生にインスリン治療をお願いしました。
Dさん:
最初は普通に成長していたんですけど、9歳の時に体重が4歳の子みたいに痩せて、肌もざらざらになったんです。あと、とにかくトイレが近かったので病院に行ったら、そのまま入院させられ、すぐにインスリンを打たれました。
病院でいつも注射されていて、看護婦さんから「家に帰ってからもやらなくちゃいけない」と聞いていたので、「自分でやってみよう」と思って、看護婦さんにどのようにやるか練習をしたいと言ったら、「みかんに針を刺してごらん。1番人の感触に似てるから」と言われました。
その頃は今みたいに良い針もなかったので、そうやって練習をしてから自分でやりはじめました。
Eさん:
私も、小学校6年生の時に、とにかく喉がよく渇くのとトイレに行く回数が多く、たまたま風邪をひいたときにかかりつけの医院に行ったら、大きな病院に行くように言われて即入院。
入院してすぐにインスリンを打ち始めました。
そこで注射を打つ練習もしましたね。
看護師さんが、絵を描いて説明してくれた後、生理食塩水をいれた注射器をお腹や太ももに打ったりして練習していました。
成長期は特に食事制限はなかったのですが、18歳になって初めて食事制限をするように言われました。
インスリン注射が必要となった時に、どう思いましたか?
Aさん:
切羽詰った感じではなく、医者からのすすめだから「じゃあ、打たなきゃしょうがないな」という程度でした。
医者から薬もらって2、3年飲んでましたけど、食事療法や運動療法の指導もされたのに、結局自分ができなくて、数値が上がったからインスリンになったと思いました。
薬飲んで、ちゃんと食事療法すれば本来は良くなるはずだと思っていたんですけど、結果的に「それができないんだからもうしょうがない」と。マイペースで食べたいものを食べていたし、食事の量やしょうゆの使用量なども指導されていたのに、守らなかったから・・・。
Bさん:
周りにインスリンを打っている人や糖尿病の人が多かったのでいろいろな話はよく聞いていたし、叔父が50年近く注射を打っていて「悪いことはないよ」ということを言っていたので、スムーズに受け入れられましたね。
叔父の影響もあり、注射さえ打っていれば血糖値の上がり下がりをコントロールできるなと思い、「ラッキー」というぐらいの気持ちでした。
糖尿病になる前から仕事がハードで、食事をする時間もとれなかったんです。仕方がないのでコーラを1日10本くらい飲んでごまかし、夕方になってお腹空いたなと思ったら、まんじゅうや水ようかんのパックを食べて、夜の9時頃になってようやくご飯を食べるという生活でしたから・・・。なるべくしてなったと思っています。
Cさん:
糖尿病だという自覚はあったんですけど、10年も20年も前から血糖値が上がっていたので、それが普通になってしまい、あまりまずいという意識がありませんでした。
それだけに、「インスリンまでいかなくてもいいんじゃないか」と思っていたのが正直な気持ちでした。
でも、もう数値が下がらないようになってきたので受け入れざるを得ませんでした。
あとは、どうしてもお酒はやめられなかったので、インスリンでコントロールできるのであれば、という気持ちもありましたね。
Dさん:
2型の人と違って、私の場合は全くインスリンが出ていないので、インスリン注射に対しては「やらなければ死んでしまうもの」みたいなイメージしかありませんでした。
インスリン治療をしていて不便を感じたことはありますか?
Bさん:
友人と鰻を食べにいった時、「高級な店なので人前で注射ができない」と思って、先にトイレに行って注射をすませたんです。ただその後、そこの店は注文してから割いて焼くので時間がかかり、料理が出てくるまでに低血糖を起こして倒れ、大騒ぎになったことがあります。
それ以来、そういう店には行っていないです。それと、必ずブドウ糖を2個携帯するようになりました。
Dさん:
私も、いろいろな店に行って食事したい気持ちはありますが、人気があって混んだりする店や、トイレが遠い、座ったらすぐ注文して食べなきゃいけない店は、注射をするタイミングがなくて困るので、避けなければいけないと思っています。
Eさん:
私は、学生の頃ですけど、土曜日の授業が予定より延びてしまった時、食事の時間が遅れたために、低血糖を起こして泣き出してしまいました。手に持っていた飴をガリガリなめだして、特別に付き添いの子と一緒に帰してもらった記憶があります。
生活の中で、何か気をつけていることはありますか?
Aさん:
タバコとお酒はやめられないんですけど、網膜症の合併症が怖いので、眼科だけは3ヶ月に1回必ず行き、眼底検査を受けています。
Bさん:
今は自分の考え方も変わってきて、注射だけではなく、食事制限も少しは努力しようと…。
ただ、仕事で海外出張が多く、現地で接待などを受けた時などはどうしても食べ過ぎてしまいます。
仕事のためと思うと断りきれず、この前「HbA1c値7.5」って言われて、即入院となりかけたこともあります。
なので、今は節制しています。
10年前に心筋梗塞になったのもあって激しい運動ができないので、食事で抑えるしかありません。
Cさん:
今では、運動も心がけています。
退職したので時間もあり、月に1回は山に登ったり、週3日ぐらいは40分から1時間くらい散歩しています。
【今回のまとめ】
2型糖尿病の患者さんは、糖尿病と診断された後から薬を飲み始め、数年経過し、最終的に担当の医師に勧められてインスリン注射を始めているようです。
始める時は、インスリン注射についてある程度、医師や近親者などから情報を得ていたり、インスリン注射が必要という自覚があり、「薬でコントロールできないのなら仕方がない」と自分で納得しているため、抵抗感はあまりなかったようです。
ある程度の食事制限はしているものの、食事制限がうまくできなかったり、食事制限だけで思うように血糖値を下げられない時に、インスリン注射で血糖コントロールができることは良いことだと、前向きに考えている患者さんもいらっしゃいました。
一方、1型糖尿病の患者さんは、喉の渇きやトイレの近さといった自覚症状を認識してから病院にかかり、糖尿病の診断を受けてインスリン注射を始めています。
1型糖尿病の患者さんは、子供の頃に発症していること、そしてインスリン注射という手段しかないという現状から、その事実を受け止め(難しい、つらいことだったとは思われますが)、看護師さんから打ち方を学び、自分で打てるようになるために努力をした経験があります。
後半のテーマは、インスリン治療に欠かせない『インスリン注射(針)への意識』についてです。